2019年1月30日水曜日

【歴史本】史記列伝抄

前回、「中国古代史の最前線」にて、長文をグダグダと書き殴りましたが、今回は、私好みの文献史学とはどんなものかということを体現するような一冊をご紹介しします。やっぱりそれは、宮崎市定なんですけど。

新書でもなくハードカバーで三千六百円もしますが、全集にも入っていないので、手元に置いておく価値は十分あるかと思います。宮崎市定の文章はリズムカルに読めますので、何処と言わず全ておすすめなのですが、前回の歴史観に関連する文章を念頭に特に「史記李斯列伝を読む」に目を通して見ると面白いと思います。氏のやり口というのは、司馬遷の手の内のカードを裏読みしつつ、そこから史料的事実を大胆に引き出してくる方法が、かなりの岡上好みの歴史の読み方なのです。これは、史料に対して、冷めた目を持ちつつも愛着を持って読み進めなければ出来ない芸当だと思うのです。

読み物として、普通に面白いのですが、大げさにいうなら、単なる典型的な悪役、完全なる悪を担わされた「趙高」という史的存在へのレクイエムにもなっているのではと思う次第です。


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