2019年6月29日土曜日

【歴史本】平将門と天慶の乱

東京出張の帰りに手にした本書。なかなかにスリリングでしたのでご報告です。
なにぶん、私自身、馴染みのある年代でもないので論証を追うのに少々疲れるのは、一身上の都合ということで置いておくとして、本書が何より良いと感じる岡上好みの点は、平将門の年齢を若く見積もっている点です。

普通、将門は年齢が不詳とされています。しかし、著者は、将門の生涯を論述していくにあたって、蔭位受ける資格のある蔭子で有るはずの将門が、無位無官で終わったことを理由に、成人する前に都を去ったのではないかと「推定」して、その後の論をドンドン進めていきます。

本書には、随所にこの手の推定があり、その合理的推定に基づき、将門の人生が復元されていきます。その死に当たっての「順風」と「逆風」についても、資料の裏をついていて、非常に私好みの論考がなされていると思います。読み進めるに当たって、あっと裏をかかれるというか、退屈な通説には依拠しない、良い意味の裏切りが用意されてるのが非常に好感が持てます。少なくとも、本書を読めば、臆病でもありながらも、ギラつたところもある人間味のある新鮮で若々しい平将門像が眼前に広がることは間違いないと思います。そのまま大河ドラマにでもしたら「映える」こと間違いなしでしょう。

ただ、こうして立ち上がった新鮮な将門の人物像が、そのままには真実の将門像であるとは、本書だけでは言い切れないでしょう。もうちょっと別の本も読んでみる必要はあると思いますが、平将門という唯一無二の「反逆者」についての興味をこれだけ強く引き立てることが出来た時点で、「歴史家」の著者・乃至政彦の力量の勝利ではないかとおもいます。


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