2018年2月24日土曜日

【第十八回】上司は部下の手柄を奪え、部下は上司にゴマをすれ【その他】

  今回取り上げたいのは、なんとも挑発的な題名の本書。内容的には、いかに穏便に会社にしがみつくか、という身も蓋もない内容である。が、これが意外や意外、これが読んでみると中々にリアリストであり、鋭い観察がある。

 青雲の志や情熱、はたまたは一個人としての大きな野望や欲望を持って仕事に取り組んでいる若い人には、決して積極的に読んでもらいたいと思う内容ではないが、会社での仕事や人間関係に愛想が尽きそうなところで、何となく仕事をやっている、というような中途半端な気持ちで毎日を過ごしている人には、ピッタリの内容ではないだろうか。ある意味の諦観と「サラリーマン人生」への賛歌がここにはある。それは、ある意味、非常に日本臭くて、昭和臭い内容であるが、そこには、人情味があるという点も否定はし難い事実なんだろうなと感じる。一方でこれは、会社という組織におけるリアリスズムというよりは、自分という存在へのシニシズム・冷笑主義なのかもしれない。

 私自身としては、読んでいるうちにこれはそうだなぁと苦笑するところ、こういう視点もあるだという新鮮な点、そして、これはちょっとなという、まだ若い気持ちからの反発を覚える点もあった。社員持株会は、社員としての税金のようなもので必ず入るべきだ、というころなんていうのは、まさに同意はできかねない点だ。私の考えでは時間という大いなる資産を会社に預けている以上、金銭的なものまで会社に預けるというのはどうにも抵抗がある。会社に居残ることを一つは人生を良くする一つの手段として見ることは同意であるが、会社の方が私より長生きである保証、会社が倒産してしてしまわない保証なんてどこにもないのではないだろうか。万一会社が倒産すれば、仕事と収入と資産を一気に失ってしまう。自分の能力や将来に悲観して、自力で会社をよくしようとする気持ちを失って、その後に、それでも如何に会社に居残るか、即ち、お金を引っ張るかというノウハウを伝える本が主張する現実主義の割には、少し矛盾していないだろうか。

 ちょっと長くなってしまいましたが、今の会社に望みを失いかけている人こそ読んで見るべき点がある、隠れた(失礼!)名著だと思います。

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